うるう年、うるう秒

equさんのホームページトップ


 今年1月1日午前9時(日本時間)にうるう秒挿入が行われました。 このことは既にみなさんもよくご存知のことでしょう。  午前8時59分59秒のつぎが59分60秒、そのつぎが9時ちょうどとなりました。  恥を忍んで書きますが、テレビで「地球の自転が遅くなっていくので1秒を加えて調整します」と聞いて、 「あぁそうだったんだ。うるう秒とうるう年は違ったんだ」と改めて気がつきました。  なんとなく、うるう年もうるう月もうるう秒の延長上にあるような気でいましたから。

 うるう年は、地球の公転(1年)が自転(1日)で割り切れないので、4年に一度調整するものです。 より正確にするために100年に一度のうるう年調整は行わず、 1000年に一度は行わない調整を行うものとしています。 (だから、2000年はうるう年でした)

 うるう秒は、それとは違って、変わることのない地球の動きで定義された天文時間が、 時計が精密になって実は少しずつ遅れていることがわかり、その調整をするものです。  地球の自転(1日)の長さの調節なんですね。

 うるう秒調整は1972年以来23回行われてきました。 原子時計による時間計測と、暦日との調整は、 1971年以前は標準周波数のオフセットとステップ調整の両方で行っていたということです。
 詳細は、下の、情報通信研究機構日本標準時グループの『原子時と「うるう秒」』をご覧ください。

 ちなみに、月の公転(1月)と地球の自転(1日)の調節は、およそ3年に一度はさむうるう月ですが、 太陰暦から太陽暦となった明治5年以降は行われていません。

 うるう月調整する太陰暦は、正確には太陽太陰暦というそうです。 1ヶ月は月の公転により、1年は地球の公転によっているから。

(原子時と「うるう秒」)

 上の記事は2006年1月1日のうるう秒ですが、その後2009年1月1日にもう一度挿入されました。
 そして今年の7月1日に、午前9時の前に8時59分60秒(日本時間)が挿入されるそうです。

  日経新聞2012年06月03日『サイエンス Sunday Nikkei』
うるう秒 地球内部に原因

 今年の7月1日は少しだけ1日が長くなる。時刻に1秒を加える「うるう秒」が3年半ぶりにある。 地球の自転速度は一定ではなく、標準時間を刻む精密な時計と次第にずれが生じる。 放っておけば太陽の動きと時間が合わなくなってくる。 うるう秒挿入は調整のためだ。

 うるう秒を必要とする地球の自転の変動のメカニズムは、実はまだ詳しくは判っていない。
 しかし最近になって、液体の鉄である地球の外核が上下2層に分かれていることが判った。
 2層対流モデルで、地球の磁力線の5千年から1万年の周期変動と、数万〜数十万年の磁極の反転が、 説明できるようになるかもしれない。
 外核の対流や、核とマントル最下層部の相互作用、潮汐作用と様々な要因があり、 自転を長期予測できるモデルは当分は難しそうだ。

 もっとも、うるう秒は制度そのものがなくなるかもしれない。

 コンピューターなどIT(情報技術)機器の時刻調整作業が増えつつあり、 秒刻みで動く電子商取引や電子書籍の改ざんを防ぐ時刻認証などへの影響も大きい。 このため国際機関で廃止が今年1月に議論された。 日本も廃止派だ。

 調整しないとずれは拡大するが、ざっと500年でも30分程度とみられ、 それよりも情報通信社会への影響を重視しようという考え方。 一方で廃止に反対もあり、結論は2015年の会議に持ち越された。 もし決まれば21年に廃止の見込みという。
 (編集委員 賀川雅人)


【ページトップへ】


 その後の展開です。
 いや、正確には展開が無いままに2015年7月1日にもう一度挿入されることが決まりました。

NHK NEWSWEB 2015年01月25日 13時12分「うるう秒」調整 3年ぶりに実施へ

世界各国の標準時を地球の自転に合わせるため、時間に1秒を加える「うるう秒」の調整が、 ことし7月、3年ぶりに行われることになりました。
コンピューターを使用した商取引などには注意が必要です。

 NHKの、報道というよりは国からの通知伝達のようなニュースです。

世界各国の標準時は、主に「原子時計」という精度の高い装置で決められていますが、 地球が自転する速度は、日々、僅かに変化しているため、標準時との間には徐々にずれが生じます。
このずれを補正するのが「うるう秒」の調整で、日本時間のことし7月1日の朝、3年ぶりに行われることになりました。
今回の調整は、日本では「午前8時59分59秒」のあとに、「59分60秒」という通常にはない時刻が加えられ、 1秒が余分に挿入されます。
「うるう秒」の調整が行われるのは、1972年に制度が設けられてから、 今回が3年ぶり、26回目で、18年ぶりの平日の実施となります。
「うるう秒」によって、一般の時計については1秒遅らせる操作が必要になりますが、 標準時の電波を受信して時刻を合わせる「電波時計」は、自動的に時刻が調整されます。
日本標準時を管轄する独立行政法人情報通信研究機構の花土ゆう子室長は、 「今回は、平日・水曜日に行われるため稼働している機器も多く、特に電子商取引では注意が必要だ。 時刻を合わせる仕組みは機器によりさまざまなので、メーカーなどに確認を取り、事前に必要な措置を取って当日に備えてほしい」 と話しています。
「うるう秒」の調整を巡っては、コンピューター機器の誤作動を防ぐため、廃止すべきだとする国々もありますが、 一方で、このまま続けるべきだという意見もあり、 ことし11月にスイスで開かれる国際電気通信連合の総会で今後の在り方が議論されます。

 11月の国際会議で協議される前の、この時期になぜ実施が決まったか。誰が決めたか。
 第一報にはそのあたりの事情解説は一切ありません。
 さすがは国の放送局NHKです。

 天文暦との差を無くしてから、じっくり話し合うということでしょうか。 それとも、今後も継続という素案作りが決まったのでしょうか。


【ページトップへ】


 平成28年7月、国立研究開発法人情報通信研究機構から、ふたたび「うるう秒」の実施が発表されました。

 2017年1月1日8時59分60秒が挿入されることになります。
 世界標準時2016年12月31日12時59分60秒が挿入されるので、日本では朝9時前に1秒を加えます。
 「うるう秒」の調整は、地球の回転の観測を行う国際機関である  「国際地球回転・基準系事業(IERS:International Earth Rotation and Reference Systems Service、所在地:パリ)」が決定しており、 これを受けて世界で一斉に「うるう秒」の調整が行われています。
 前回の実施から1年6カ月ぶりの「うるう秒」の挿入です。
 チリも積もれば山となる。多彩な生物が生まれた5億5千万年前のカンブリア紀には、1日は21時間ほどだったとか。
 なぜ地球の自転が遅くなるかというと、潮汐作用でブレーキがかかるからで、そこからエネルギーを得た月がだんだんと高い(遠い)軌道に登っていくそうです。 また、巨大地震で地球の歪が解消されたときには、回転能が改善されてごくわずか自転が速くなるそうです。

INTERNATIONAL EARTH ROTATION AND REFERENCE SYSTEMS SERVICE (IERS)

SERVICE INTERNATIONAL DE LA ROTATION TERRESTRE ET DES SYSTEMES DE REFERENCE

SERVICE DE LA ROTATION TERRESTRE DE L'IERS
OBSERVATOIRE DE PARIS
61, Av. de l'Observatoire 75014 PARIS (France)
Tel. : +33 1 40 51 23 35
e-mail : services.iers@obspm.fr
http://hpiers.obspm.fr/eop-pc


Paris, 6 July 2016

Bulletin C 52

To authorities responsible for the measurement and distribution of time


UTC TIME STEP
on the 1st of January 2017


A positive leap second will be introduced at the end of December 2016.
The sequence of dates of the UTC second markers will be:

2016 December 31, 23h 59m 59s
2016 December 31, 23h 59m 60s
2017 January 1, 0h 0m 0s

The difference between UTC and the International Atomic Time TAI is:

from 2015 July 1, 0h UTC, to 2017 January 1 0h UTC : UTC-TAI = - 36s
from 2017 January 1, 0h UTC, until further notice : UTC-TAI = - 37s



Leap seconds can be introduced in UTC at the end of the months of December
or June, depending on the evolution of UT1-TAI. Bulletin C is mailed every
six months, either to announce a time step in UTC or to confirm that there
will be no time step at the next possible date.


Christian Bizouard
Head
Earth Orientation Center of IERS
Observatoire de Paris, France

 うるう秒挿入が想定されていないウェアが障害を起こすため、サーバー管理者は大晦日あるいは新年の朝に出勤して、つぎのような仕事をしなければならないようです。

 また、NTTの時報サービス[117]を聞くと、「午前9時ちょうどをお知らせします。ピ・ポ・ポ・ポ・ポ・ポーン」と、ポが1回増えるはずですが・・・。


【ページトップへ】


 知らない間に、うるう秒は2035年までに廃止される方向に、議論が進んでいました。

 この間の状況について、データセンターカフェの記事が一番用を得ていました。

 うるう秒は2035年までに廃止へData Center Dynamics 2022.11.22。

ITUがこの動きを阻止しない限り

 世界各国政府は、協定世界時(UTC)を天文時(UT1)と一致させるために付加される「うるう秒」を廃止することに合意しました。

 このようなうるう秒の習慣が始まって以来、27回にわたりうるう秒が追加され、 そのたびにデータセンターセクターでは、分散システム間での時刻加算の複雑さにより、障害やデータ損失が発生していました。

 今回の決定は、国際度量衡総会(CGPM : General Conference on Weights and Measures)で行われ、 カナダ、米国、フランスの代表が、2035年までにうるう秒を廃止することに賛成しました。

 ロシアは、GPSなどとは異なり、 衛星測位システム「GLONASS」にうるう秒を組み込んでいるため、反対票を投じました。

 ロシアは新しい衛星と地上局を設置する必要があり、 望遠鏡のアライメントにうるう秒を使っている天文学者も、システムの更新や調整が必要になる可能性があります。

 さらに問題を複雑にしているのは、国際電気通信連合(ITU)です。 ITUはうるう秒の決定をCGPMに委ねましたが、技術的にはUTCの管理下に置かれています。 ITUは、うるう秒の変更を延期することも可能なのです。

 このあたり曖昧な書き方です。 世界時は国際天文学連合 (IAU)が決めていたものを、国際度量衡委員会 (CIPM)=国際度量衡総会 (CGPM)に移管し、その元で国際度量衡局 (BIPM)が取り扱っています。
 時刻標準を通報する方式に関しては国際電気通信連合 (ITU) が責任を有することとなっているようです。
「技術的にはUTCの管理下に置かれて」は「技術的にはITUの管理下に置かれて」とした方が良い気が・・・・

 Meta、Amazon、Googleが強く働きかけたことによる今回の変更は、 地球の自転が減速していたのが、原因不明のまま加速していることを受けてのこととなります。

 これは、まさに最初の「負のうるう秒」につながる可能性があり、多くの障害を引き起こす恐れがあります。

 地球の自転は予測不可能だが、もし現在のUTCとUT1の変化率が続くなら、うるう秒が段階的に廃止される前に、 2030年までに負のうるう秒が必要になる可能性があると予測されています。

 月の重力による潮汐力で地球の自転エネルギーは消耗されているので、自転はだんだん遅くなっているというストーリーが、崩れています。
 最近大きな地震もありました。地球の奥深いところで慣性能が変っているのかもしれません。
 それはさておいて、1秒追加するのでも大変だろうに、59秒で1分を終えると更に大変なことになりそうです。もう一段奥のところの計算を変える必要があるのかもしれない。
 Meta、Amazon、Googleがそろって強く働きかけたというのも、簡単なソフト追加に止まらない、膨大な手仕事の発生と重大なエラー危険性が窺われます。


【ページトップへ】


 とうとううるう秒廃止が決まりました。

日経新聞電子版 2024年2月7日 5:00 『「うるう秒調整しない」国連機関が決議 実質廃止へ』

(自転の加速)
世界時とUTCのずれ。うるう秒の挿入によって、ずれが0.9秒未満に 
抑えられている。20年ごろから自転速度が上がっているように見える
(IERSの画像を基に日経クロステック編集部が作成)      

 日常的に使っている時刻「協定世界時(UTC)」を調整する「うるう秒」が2024年以降、実施されない見込みとなった。 国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)の無線通信部門による23年12月の決議で、 「1秒単位でのうるう秒の調整をしない」と決まったからだ。(以下略)

(日経クロステック/日経コンピュータ 翁羽翔)
[日経クロステック 2024年1月23日付の記事を再構成]


 理由については、前に転載し記事の通り、近年、自転速度が上がっていてUTCとUTのずれは減少傾向にあるからです。 24年1月2日時点で、ずれはほとんどない状況にあります。
 今後も速度が上がと「うるう秒の削除」が実施されねばならなくなるが、 それに要する業務量が甚大になり、万一作業にエラーが生じた場合影響が甚大であるからといいます。

【ページトップへ】

 日本語の「うるう」は日や月を余分に挿し入れることであり、余分なものという意味になります。一方、英語ではうるう年は”Leap Year”跳び越す年となります。
 反対の意味になっていますが、これは平年には曜日が1日ずつ早くなるのに、うるう年には2日早くなり1日跳んだようになるからだとか。